第17回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.12.21
ものづくりとアートの境界線──職人技はアートか
技術だけなら工芸品、問いだけなら思いつき。両方が揃ったとき、それは時代を超える。
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798には、絵画や彫刻だけでなく、陶芸、金工、木工など、工芸の流れをくむ作品も数多くある。それらの前に立っていて、ふと、昔から気になっていた問いが頭をもたげた。職人技とアートの境界線は、どこにあるのだろう。
よく言われる整理はこうだ。職人は、求められた形を完璧に再現することを目指す。アーティストは、誰にも求められていない新しい問いを世界に投げる。再現の技と、創造の問い。たしかに、わかりやすい区別だ。
だが798で見た工芸系の作品たちは、その境界線を軽々と越えていた。土を焼く、金属を叩く、木を削るという、何百年も続く技術の体系。その完璧な習熟の上に、「この技術で、まだ誰も見たことのないものを作れないか」という、作り手個人の問いが乗っている。技術だけなら工芸品で、問いだけなら思いつきだ。両方が揃ったとき、それは時代を超えるものになる。
この構造は、私たちの製造現場にも、そのまま当てはまる。私たちのグループの工場には、職人たちがいる。配合の精度を守り抜く技術。充填の美しさへのこだわり。検品のときの、機械では拾えない違和感を察知する目。毎日、同じことを、完璧に繰り返す。その凄みは、現場に立てばわかる。あれは間違いなく、習熟の極みとしての「技」だ。
そこに、「もっと良い形はないか」「この工程は、まだ進化できるのではないか」という問いが加わったとき、何が起きるか。ものづくりは、単なる生産から、アートの領域に片足を踏み入れる。実際、製造現場の小さな改善の積み重ねこそが、商品の品質の、目に見えない深さを作っている。
技術と、問い。両方を持つ現場だけが、時代を超えるものを作れる。798の工芸作品たちは、私たちの現場の職人たちへの、最高の讃辞のようにも見えた。ものづくりの誇りを、あらためて胸に刻んだ。
INSTINCT RAS · MAGAZINE
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