第16回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.12.18

美は国境を越える──798で感じた「共通言語としてのアート」

世界に出るとは、英語を話すことではない。美という共通言語を、磨き抜くことだ。

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798のギャラリーには、世界中の作品と、世界中の観客がいた。ヨーロッパから来たらしい年配の夫婦。アジア各国からの若い旅行者。地元の学生たち。そして日本から来た私たち。使う言語も、育った文化も、アートの知識量もばらばらな人間たちが、同じ空間で、同じ作品と向き合っている。

そして、良い作品の前では、みな同じように足を止める。少し身体を引いて全体を見て、近づいて細部を見て、また離れる。息をのむ瞬間に、国籍はない。誰かの感動の仕方が、言葉がわからなくても伝わってくる。

美は、翻訳のいらない言語だ。あの空間で、それを何度も目撃した。

この体験は、私たちの事業にとって、とても大きな意味を持つ。私たちは化粧品・ウェルネスの会社として、アジアから世界へ商品を届けようとしている。言語も、文化も、商習慣も違う市場に出ていくことになる。現地の言葉を学び、現地のルールを尊重し、現地のパートナーと組む。そのすべてが必要だ。

しかし、最後の最後に頼れるのは、説明ではない。「手に取った瞬間に伝わる何か」だ。テクスチャーの心地よさ。香りの品の良さ。ボトルを持ったときの重心。デザインの佇まい。使い終わったあとの、小さな満足感。そこに宿る美意識は、説明書を読まなくても伝わる。良い作品の前で世界中の人が足を止めるように、良い商品は、国境を越えて人の手を止めさせる。

798で、多国籍の観客と同じ作品の前に立ったとき、この確信は一段深くなった。

世界に出るとは、英語を話すことではない。プレゼン資料を増やすことでもない。美という共通言語を、磨き抜くことだ。私たちの商品が、いつか世界のどこかの売場で、言葉の通じない誰かの足を止める。その瞬間のために、今日の美意識を鍛えている。

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