第19回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.12.28
破壊せず、再生する──798の哲学とサステナブルなブランドづくり
サステナビリティの本質は、「壊さずに、活かし続ける」という哲学だ。
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連載も終盤に入った。ここで、798という街の在り方の核心だと私が感じたことを書いておきたい。それは、この街が「壊さなかった」ことだ。
経済合理性だけで考えれば、老朽化した工場群は取り壊して、新しい商業ビルを建てるほうが正しかったかもしれない。土地の効率は上がり、短期の収益も読みやすい。実際、世界中の都市で、そうやって消えていった風景は数えきれない。
しかし798は、壊さなかった。レンガも、梁も、窓も、時代のスローガンの跡さえも残し、その上に新しい時間を重ねる道を選んだ。手間はかかる。効率も悪い。だが結果として、この街は世界のどこにも複製できない場所になった。効率を捨てた場所にこそ、唯一無二の価値が生まれた。この逆説が、798の最大の教えだと思う。
サステナビリティという言葉は、環境対応の文脈で語られることが多い。省資源、リサイクル、排出削減。どれも重要で、企業として真剣に取り組むべきテーマだ。しかし798を歩いたあとでは、この言葉の本質が、もう少し深いところにあると感じる。
サステナビリティの本質は、「壊さずに、活かし続ける」という哲学だ。建物も、技術も、人も、そしてブランドも。
私たちは、幹細胞培養上清液という素材を扱い、肌や暮らしに寄り添う化粧品・ウェルネス商品を作っている会社だ。この事業で私たちが目指しているのは、流行を追って、作っては捨てるサイクルの中で戦うことではない。長く使い続けられ、長く愛され、使う人の毎日に静かに定着していくブランドを育てることだ。
作っては壊す競争は、体力の勝負になる。作って、重ねて、育てる道は、時間の勝負になる。私たちは後者を選ぶ。20年かけて文化になった北京の工場街が、この選択の正しさを保証してくれているようだった。
壊すのは一瞬。重ねるのは何十年。だからこそ、重ねたものは強い。
INSTINCT RAS · MAGAZINE
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