第11回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.11.30

中国の若者とアート消費──798に集まる世代を観察して

アートは「鑑賞するもの」から「参加するもの」へ。商品もまた、自分を表現する素材になった。

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798を歩いて、強く印象に残ったことのひとつが、訪れている人の若さだ。

カメラを提げた学生のグループ。こだわりの服装で歩くカップル。ベンチでスケッチブックを開く人。友人の写真を真剣な表情で撮り合う人たち。平日の昼間でも、街は若い熱気で満ちていた。美術館というと落ち着いた年齢層を想像しがちだが、この街の主役は明らかに20代だった。

彼らを観察していて感じたのは、アートとの関わり方が根本的に変わっている、ということだ。上の世代にとって、アートは「鑑賞するもの」だった。静かに観て、解説を読み、心の中で味わう。しかし798の若者たちにとって、アートは「参加するもの」だ。作品の前に立ち、自分なりの構図で写真を撮り、キャプションを考えて発信する。作品を素材に、自分の表現を重ねている。鑑賞と創作、消費と表現の境目が、溶けている。

この変化は、アートの世界だけの話ではない。美容の世界でも、まったく同じことが起きている。商品はもはや「使うもの」であると同時に、「自分を表現する素材」だ。どのブランドを選ぶか、それをどう暮らしの中に置くか、どう撮って誰に見せるか。選択のひとつひとつが、その人の価値観の表明になっている。

だから若い世代は、モノの機能や価格だけでは動かない。彼らが買っているのは、機能に加えて、その背景にある物語と美意識だ。「このブランドを選ぶ自分」に納得できるかどうか。その審美眼は、私たちが思う以上に鋭い。

798の若者たちがカメラを向ける先を見ていると、彼らが何を「語りたくなる」のかが見えてくる。完璧に整ったものより、本物の手ざわりがあるもの。声の大きいものより、静かに自信のあるもの。

これからのブランドづくりが向き合うべき視線が、あの街にはあった。私たちは、その視線に応えられるものを作っていきたい。

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