第9回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.11.23

五行思想と現代アート──BIOTグループのブランド哲学から見た798

土が火を受け止め、火が木を育て、金が価値を定め、水が循環させる。街もまた、循環で生きている。

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私たちBIOTグループは、木・火・土・金・水の「五行」をブランド哲学に据えている。グループ各社がそれぞれのelementを担い、互いに生かし合い、循環しながら全体を成す、という考え方だ。東洋に古くから伝わるこの世界観を、現代の企業グループの設計思想として採用している。

その私たちの目で798を歩くと、面白いことに気づく。この街にも、五行によく似た循環があるのだ。

まず、土台となるのは古い工場建築、つまり「土」だ。すべてはこの器の上に載っている。そこにアーティストたちの熱量、「火」が灯った。火は土を温め、創作という営みを生む。生まれた作品は、育っていく実り、「木」だ。木々が茂るように作品が増え、街に生命力が満ちる。それを世に送り出すギャラリーやショップの仕組みは、価値を磨き上げる「金」。そして、世界中から訪れる人の流れが「水」となって街を潤し、その水がまた次の創作の土壌を育てる。

土が火を受け止め、火が木を育て、金が価値を定め、水が循環させる。どれかひとつが欠けても、798は成立しない。建物だけあっても、アーティストだけいても、観客だけ来ても、街にはならなかった。要素の「循環」こそが、街を生かしている。

西洋的な思考は、しばしば世界を「対立」で捉える。新旧、聖俗、アートとビジネス。しかし東洋の思想は、世界を「循環」で見る。一見対立するものが、実は互いを生かし合っている、という見方だ。

現代アートの最前線の街を、東洋思想のレンズで歩く。この体験は、私たちにとって特別な意味があった。五行という哲学が、日本の中だけで通じるローカルな飾りではなく、世界のどんな場所の構造をも読み解ける「見方」であることを、確かめられたからだ。

ブランド哲学とは、額に入れて飾る言葉ではない。世界を読み解き、判断の軸になる、実用の道具だ。北京の路地で、自分たちの哲学の手応えを確認できたことは、この視察の大きな収穫のひとつだった。

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