第7回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.11.16

798に学ぶ「リブランディング」──工場地帯が文化発信地に変わった構造

資産の再定義、最初の熱量ある住人、そして時間。ブランドは、建てるものではなく育つもの。

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798の変化を、ビジネスの言葉で言い換えるなら、世界で最も成功したリブランディングのひとつだ。「役目を終えた工場地帯」という認識が、「アジアを代表するアート地区」へと書き換わった。しかも、莫大な広告費を投じたわけでも、有名コンサルタントが絵を描いたわけでもない。

この変化の構造を分解すると、3つの要素が見えてくる。

ひとつ目は「資産の再定義」だ。古い工場建築は、通常の不動産の物差しで見れば、取り壊すべき負債だった。しかし見方を変えれば、高い天井、大きな窓、頑丈な躯体、そして歴史の刻まれた質感を持つ「他にない空間資産」だった。同じものが、定義次第で負債にも資産にもなる。リブランディングの出発点は、いつもこの再定義にある。

ふたつ目は「最初の熱量ある住人」だ。798を変えたのは、行政でも大企業でもなく、損得勘定より先にこの空間に惚れ込んだアーティストたちだった。最初の住人の「質」が、その後に集まる人の質を決める。ブランドで言えば、最初のファン、最初の語り手が誰かということだ。ここを広告で水増しすると、その後の全部が薄まる。

みっつ目は「時間」だ。798は一夜にして生まれていない。20年以上かけて、店が増え、層が重なり、物語が蓄積されてきた。一気に開発された街には、この層がない。だから深みが出ない。

さて、これを企業に置き換えてみる。自社の歴史や技術を「古い」と切り捨てて、流行の言葉で上塗りするリブランディングは、たいてい失敗する。やるべきことは逆で、自社が既に持っているものを再定義し、そこに最初に共感してくれる熱量の高い仲間を見つけ、時間をかけて層を重ねることだ。

私たちのグループも、上場という節目を越えて、ブランドを次の段階に育てていく途上にある。798の20年は、私たちにとって最高のケーススタディだ。ブランドは、建てるものではなく、育つもの。焦らず、しかし止まらず、層を重ねていきたい。

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