第5回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.11.09

798のカフェ・ショップ文化──アートが日常に溶け込む街

文化は美術館の中だけにあるのではない。コーヒーカップの中にも、化粧水のボトルの中にも宿らせられる。

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現地写真:カフェ・ショップ

798の魅力は、ギャラリーだけではない。むしろ街の体温を作っているのは、カフェ、書店、デザイン雑貨の店、小さなショップたちだと思う。

アートを観て、歩き疲れたらコーヒーを飲む。窓の外の景色を眺めながら、いま観てきた作品の話をする。帰り際に、気に入った雑貨や本をひとつ買って帰る。この「観る・休む・持ち帰る」の循環が、街の中に自然に設計されている。だから人は長く滞在するし、また来たくなる。

カフェのひとつに入って、印象的だったことがある。そこは単なる休憩所ではなく、店そのものが小さな展示空間だった。壁には作品が掛かり、家具は選び抜かれ、カップひとつにも店の美意識が表れている。コーヒーを飲むという日常の行為が、そのまま文化の体験になっている。

ここに、798のもうひとつの発明があると思う。アートを「特別な日に、構えて観るもの」から、「日常の中に、当たり前にあるもの」へと変えたことだ。敷居が下がることで、アートに詳しくない人も街を楽しめる。楽しんだ人の何割かは、次はギャラリーの奥まで足を運ぶ。日常が、文化への入口になっている。

美容も、本来は日常の営みだ。特別な日のためだけのものではなく、毎朝、毎晩の暮らしの中に、小さな心地よさを積み重ねていくもの。肌を整える数分間が、一日の始まりの儀式になり、一日の終わりの区切りになる。私たちが商品を通じて届けたいのは、まさにこの「肩の力の抜けた豊かさ」だ。

798のカフェで過ごした時間は、そのことを再確認させてくれた。文化は、美術館の中だけにあるのではない。コーヒーカップの中にも、化粧水のボトルの中にも、宿らせることができる。日常を少しだけ豊かにするものこそが、いちばん長く愛される。

私たちのものづくりの原点を、北京のカフェで思い出すとは思わなかった。旅とは、そういうものかもしれない。

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