第3回 / 全20回 · CULTURE & BRAND · 1969.11.02
バウハウス建築×現代アート──「古いものを壊さず活かす」空間デザイン論
壊すのは一瞬、重ねるのは何十年。ノコギリ屋根の光が教えてくれる、時間の層という資産。
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現地写真:建築外観・ノコギリ屋根
798の建物群は、1950年代に旧東ドイツの設計協力で建てられたと言われている。装飾を排し、機能に徹した設計。バウハウスの思想を色濃く感じさせる、機能主義建築の集合体だ。
なかでも象徴的なのが、ノコギリ屋根だ。ギザギザの屋根の北側だけに窓を設け、一日を通して安定した自然光を室内に取り込む。直射日光は入れない。もともとは工場の精密な作業のために計算された光だが、この「均質で柔らかい北向きの光」は、偶然にも、アート作品を照らすうえで理想的な光でもあった。60年以上前の産業設計が、現代の展示空間として完璧に機能している。この事実だけで、しばらく天井を見上げてしまった。
ここで重要なのは、798がこの建築を「壊さなかった」ことだ。
壁のレンガも、天井の梁も、配管も、当時のスローガンの跡さえも、消さずに残している。新しい壁を立てるときも、古い壁を否定しない。その上に現代アートが重なることで、1950年代と2020年代というふたつの時間が、ひとつの空間に同居する。この「時間の層」こそが、798の空気の正体だ。新築のビルには、どれだけ金をかけても複製できない。
ものづくりの世界でも、同じことが言えると思う。
新しさとは、過去を消すことではない。過去に重ねることだ。私たちのグループには、長年にわたって化粧品や健康食品の製造に携わってきた現場があり、そこには職人たちの技術と、積み重ねられた製造ノウハウがある。新しい商品を作るとき、私たちはその蓄積を「古いもの」として脇に置くのではなく、土台として、その上に新しい発想を重ねる。
トレンドだけで作られた商品は、トレンドとともに消える。しかし、時間の層を持った商品は、簡単には古びない。798の建築が教えてくれるのは、そういうものづくりの原則だ。
壊すのは一瞬、重ねるのは何十年。どちらが唯一無二の価値になるかは、この街が証明している。
INSTINCT RAS · MAGAZINE
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